こんにちは!

以前「R&Dに新風を吹き込む! カナダ帰りの男!」で登場したR&D事業部の西久保です。
もう秋ですね。みなさんいかがお過ごしでしょうか。

前回スンヨンさんに投稿していただいた「R&D日本語研修合宿レポート~受講者Side~」はすでにご覧になられましたか?日本語力の向上を目指す皆さんのひたむきな姿や、打ち上げでの楽しそうな様子が伺えましたね ^_^

スンヨンさんのブログにもあったように、R&D夏研修では韓国メンバーの日本語力向上を目指すということで、以下のプログラムが行われました。

・滑舌・発声トレーニング
・イントネーショントレーニング
・ロールプレイング
・伝え方トレーニング
・外来語・和製英語の朗読
・早口言葉

今回はその舞台裏について、R&D夏研修の講師側の皆さまにインタビューを行いたいと思います!

それでは講師を務めた皆さま、よろしくお願いいたします!

\「よろしくお願いします!」/

講師陣集合写真

■ 1.今回のR&D夏研修発案のきっかけや、プログラムを作成した流れを教えてください!

雨森次長
雨森次長(企画)

開発において必要なのは技術力だけでなく、ソフトスキルも重要であると考えています。そのソフトスキルの中でも最も基本的なのがコミュニケーションです。R&D事業部では日本語での開発コミュニケーションをメインとしていますが、外国人メンバーが多く日本語に苦戦しているメンバーもいます。

「正しい日本語で、正しく内容を伝える」

これができると、受け取る側も理解しやすく、結果的にチームの開発効率が上がります。技術スキルよりコミュニケーションスキルを延ばす目的で企画しました。

外国人メンバーは、今までも日本語能力試験(JLPT)の最高レベルであるN1合格を目指して、語彙、文法、読解、聴解の勉強をしていました。
しかしそれでも仕事でのコミュニケーションでつまずくことがありました。

そこで、彼らの苦手分野を把握するため、日々のコミュニケーションを録音して何度も聞き直し分析をしました。

そして、滑舌・イントネーション・瞬発力・伝え方の課題があることがわかりました。
「楽しく」勉強ができるように、私が子どもの頃に好きだったテレビ番組「マジ●ル頭脳パ●ー」をヒントに、様々な書籍を読んで講師となるメンバーとミーティングし、今回の研修プログラムを作成しました。

■ 2.それぞれのトレーニングの意図を教えてくださいますか?

菅野リーダー
菅野リーダー(滑舌・発声トレーニング、イントネーショントレーニング担当)

滑舌研修については、普段何気なく発音している「五十音」をよりはっきりと発音できるようにすることが目的です。加えて、今回の研修合宿では一時限目にあたる講義だったため、元気よく発声することで韓国メンバーの士気(?)を高める役割もありました。

イントネーション研修については、普段の仕事で気になる「韓国風日本語」 を正すことを目的としました。韓国風日本語によるイントネーションの違和感は、日本人メンバーに意思疎通の混乱をもたらすことがしばしばあります。この講義がそれを解消するきっかけになればと思って取り組みました。

松本係長
松本係長(ロールプレイング担当)

他の研修項目が基礎的なトレーニングなのに対して、より実践的な日本語会話を練習して欲しいと思って準備しました。
即興によるハプニングを誘発して、演じている人だけでなく観ている方も楽しい研修にしようと思いました。

清水さん
清水さん(伝え方トレーニング担当)

このトレーニングはゲーム形式で行いました。
ある日本語の単語に対し、説明する人と説明を聞いてその単語が何かを当てる人に分かれて行うゲームです。テレビでも見たことがあるかもしれませんね。

チーム毎に順番にこのゲームを行い、ゲームが終わった後、回答出来なかったお題に対して、「なぜ回答出来なかったか?」「どう説明すれば伝わったか?」そういったことを見学していたチームも含めて全員で話し合いました。

これによって、話の核心を伝える・聞き取る為の能力について自分が出来ている部分、出来ていない部分を感じ取って貰うことが狙いでした。説明に必要な単語や情報は出しているのに、正しく伝わらないのは何故か?人の話が理解できないのは、説明する方が悪いからなのか、自分の聞き取り力や語彙力に問題があるのか?そういった自分の弱点を明確にする機会を作りたいと思い、こういった形式の研修を用意しました。

山田さん
山田さん(外来語・和製英語の朗読、早口言葉担当)

まず外来語・和製英語の朗読についてですが、ミーティングや日報などでカタカナ語を間違える韓国メンバーが多かったので、集中的にトレーニングできないかと考えました。よく間違える要素として、長音、小さいッ、FとPの発音、カタカナを含む語の読み方などがあり、これら苦手要素を大量に含んだ文章をネットから探してきたり自作したりして教材にしました。練習することで苦手要素があるということを認識してもらう目的があったため、夏休み前に資料をすべてお渡しし、予習をお願いする形をとりました。

また、コミュニケーションの応用編が「伝え方トレーニング」だとすれば滑舌トレーニングの応用編が「早口言葉」です。アナウンサーや声優の訓練でも取り入れられているということで、今回採用しました。
韓国人メンバーだけでは、難しい早口言葉をどう読んだら良いかわからないことが予想されたので、韓国人メンバーを数人ずつグループ分けし、日本人メンバーがフォローとして入ることで、正しい発音を教える形式を取りました。
チーム対抗戦の形式は、少人数グループというところから自然に出てきたアイデアだったと思います。

会議画像
▲ミーティングで研修プログラムについて真剣に話合う様子

■ 3.研修内容を作成する上で大変だったことは何でしょうか?

菅野リーダー
菅野リーダー(滑舌・発声トレーニング、イントネーショントレーニング担当)

発音研修については、研修最初の講義ということで韓国メンバーの温度感が心配でした。朝一ということもあって、後ろの研修につなげていくためにはどのように韓国メンバーのテンションを上げていくべきか、それを考えながら内容を練りました。実際には皆が元気よくついてきてくれたので本当に助かりました。

イントネーション研修については市販のテキストを用いたため、私個人で考案したものはさほどありません。ただ、そのテキスト内では普段何気なく発している言葉のイントネーションのメカニズムが解説されているなど、私達日本人にとってもかなり勉強になる内容でした。韓国メンバーに説明する以前に、自分がこれを理解せねばなりませんでしたので、その点で時間を要しました。

松本係長
松本係長(ロールプレイング担当)

当初参考にした、市販のロールプレイングのテキストに載っていたシチュエーションが、わりと単純なものだったので、(たとえば、レストランで注文が間違っていたときに店員にどう言うか)もうすこし実際的なシチュエーションコメディー(2人漫才の大筋の筋書きのようなもの)の筋書きを7つ考えるのが大変でした。

清水さん
清水さん(伝え方トレーニング担当)

ゲームが楽しめなければ前向きに学ぶ気持ちも削がれるだろうと思い、説明する側の制限や正解の判定基準、進行方法などルール作りに気を使いました。
また単語自体を皆が知らないと話にならないので、全員が受かっている日本語検定(JLPT)N2レベルの範囲の単語から、お題にふさわしそうなものを300語程度選りすぐり、それを1つずつスライドにする作業は地味に大変でした…結果全員で100語も終わりませんでしたが。笑

また、合否判定では日本人審判が○×の札を利用することにしましたが、その札を心を込めて手作りしました!
作っているうちにクオリティとデザインにこだわりが出てきて、思ったより時間がかかり大変でした。 笑

清水さん○×
▲こちらが清水さん手作りの○×

山田さん
山田さん(外来語・和製英語の朗読、早口言葉担当)

外来語を大量に含んだ文章というのが、その気になって探してみると意外に見つからず、教材探しに苦労しました。
教材ごとの難易度の差が大きくそのままでは使えない部分があり、難易度や長さ調整のために文章を書き換えた箇所も多いです。

早口言葉については、日本人にとってすら難しい言葉が多かったです。
簡単なものから難しいものまで、難易度をバランスよく分散させるため、早口言葉を掲載しているサイトをかなりの数探しました。難しくするためなのか、日本語が不自然だったり、言葉が古すぎたりするものもあり、そういったものを除かなければならず、「3段階の難易度で12個ずつ」の早口言葉を収集するのが思った以上に大変だったと記憶しています。当初からゲーム形式で考えていたため、点数の付け方や判定の流れなどにも悩みました。

■ 4.実際に研修をしてみてどうでしたか?

菅野リーダー
菅野リーダー(滑舌・発声トレーニング、イントネーショントレーニング担当)

今までボヤッとしていた、韓国メンバーの日本語発音の弱点が鮮明に分かった、そんな研修でした。
私の研修中に見えた弱点が午後の研修でも同様に現れていたため、韓国メンバーがこれからの日本語会話で何に気をつければいいのか、どこを直す必要があるのか、そのためにはどんな勉強が必要なのか。それらの点が明確になりました。これが分かったことは、今回の研修の最も大きな成果のひとつだと思います。

また、多くの韓国メンバーは、私の研修で学んだことを午後の研修でもしっかりと活かそうとしていました。私たちが韓国メンバーの弱点を理解しただけでなく、韓国メンバー自身もそれを知り、すぐに直そうとする姿勢や実践力は、講師の立場からすれば嬉しいのひとことです。

松本係長
松本係長(ロールプレイング担当)

演じる二人のペアは、いきなり状況設定の紙を渡されて戸惑っているようでした。
人前で芸をするようなことが苦手な人にはちょっと大変だったと思いますが、見ている人もみんな仲間なので、なんとか3分程度の演技を即興で会話を組み立てて演じてくれました。
逆にこういうことが得意なペアは、演出を加えてくれて見ていて爆笑できるようなやり取りをしてくれました。

清水さん
清水さん(伝え方トレーニング担当)

まず、皆がゲームを真剣に行ってくれてとても盛り上がったので、私も本当に楽しかったです。
話し合いでも皆積極的に意見を出してくれましたし、「面白かった」「為になった」「もう一回挑戦したい!」と声をかけてくれて人もいたので、充実した研修内容になったかなと、準備した甲斐があり本当にほっとしました。
回答しきれなかった残りのお題もあるので、また出来る機会があればいいなと思ってます。

山田さん
山田さん(外来語・和製英語の朗読、早口言葉担当)

韓国メンバーの皆さんが本当に積極的に参加してくださって嬉しかったです。予習が必要な課題についても、しっかりと事前練習をしてきてくれていることを感じました。
菅野リーダーが午前中にアクセント・イントネーションについて研修をしてくださっていたことで、その後の午後研修が非常にやりやすかったことも感じています。
研修以外では、20人スケールのカレーを作るという普段はなかなか無い経験ができ、楽しませていただきました。

■ 5.最後に研修によって得られた成果、参加メンバーの変化について感じたことをお答えください。

雨森次長
雨森次長(企画)

研修を受けたメンバーは、明らかに日本語能力が上がったことを実感しています。
日本語が上達することで発言量が増え、ミーティング能力、ヒヤリング能力、ドキュメント能力など、様々なソフトスキルが上がっています。

エンジニアは技術力を評価されがちですが、チームとしてその技術力を最大限発揮するためには、個々のソフトスキルと、組織のチーム力が不可欠です。

そのベースにあるのがコミュニケーションです。研修を受けたメンバーにとっても、講師メンバーにとっても、大きな成長につながったと思います。

次長画像

おわりに

いかがでしたか?
今回のR&D夏研修の成功の裏には、様々な苦労や考えがあったことをお分かりいただけたのではないでしょうか。

スケジュールを決めたり、バスを手配したり、料理を考えたり、プログラムを作成したり…
準備には相当なコストがかけられたはずですが、その中で通常の業務をこなし、後輩の面倒を見たりする様を見て、改めて先輩のすごさを見せつけられました。

もちろん講師陣にはプロの日本語教師経験などありません。しかし、生徒の力量や苦手な部分をきちんと分析することで、十分に効果のある授業を作れることを知りました。

また、生徒側のモチベーションが高かったことも研修の成功要因の一つだったと思います。韓国メンバーはいつもノリがよいので、こういう行事ごとではとても頼りになります。笑

今回の研修を経て、改めてR&Dのチームワークの良さを再確認しました。次回は私も講師側で協力したいと思います。

以上、R&Dの西久保でした!